現実からの逃避旅行記

現実逃避の物語。

詩方夜行

何度目だろう?この虚しい夜を迎えるのは。
何もない。
ただすれ違うだけの人たち。
ぼやけた街をただ眺めるだけの時間。
希望(ひかり)のない夜。
僕はその日、洗濯をしに街のコインランドリーに座っていた。
行き交う人々は異世界のそれを感じさせるほど個性的で、ただ眺めているだけで時間が過ぎた。
洗濯が終わると、洗ったものを乾燥機に入れ僕はラーメン屋に向かった。
特別美味しくはなかった。でも、期待よりは美味しかった。
ラーメン屋から戻りタバコを吸い終えた頃、ちょうど乾燥が終わった。
21:00
これから仕事だ。
ただ体を動かし続け、時間が過ぎるのをひたすらに待つ。
そんな仕事だ。
僕は、どこで間違ったんだろう?
小学生だった頃の僕には口が裂けても言えないような未来だ。
とりあえず、洗濯物をたたんでコインランドリーを出る。
ドンッと何かがぶつかった。
しかし、何事もなかったように世界は進む。
駅に向かい電車に乗る。なんてことない時間。何も起こらない日常。

かつてのバンド仲間は言った
「音楽やめるなんてもったいない」。
恩師が言った
「役者を続けなさい」。
かつての行きつけの居酒屋の大将が言った
「お前なら大丈夫だ」。
バイト先の先輩が言った
「道具向いてるよ」
亡くなった母が言った
「あなたなら、ひょっとするとひょっとするかもね」

そのどれもが、今の僕にはもったいない。
その言葉たちに見合う男になる為に僕は何をすればいい?
そんなことを考えながら夜道を進む。
この一歩一歩が。いつか希望(ひかり)で溢れる道に続くことを祈って。
僕は今日も前に進もうとするんだろう。