現実からの逃避旅行

何とも言えません。現実逃避の二次創作です。

ジムリーダーの日常 第5話 「ハッピーバレンタイン」

それは3ヶ月前のお話。

そう。
バレンタイン。
「ヨヅキさん。どうぞ」
コトメちゃんがチョコをくれました。
「いやぁ、毎年ありがとね」
「いえ、恒例ですしお世話になっているので」
それでも嬉しいのが独り身の真理です。
「はい。ツキミも」
ツキミも大喜びです。
そんなこんなでコトメちゃんはジム内のポケモン達にチョコを配り始めます。
「女の子って大変だねぇ」
「男も大変ですよ…」
ワシオくんがいつもより遅れて出勤してきました。
「あれ?ワシオくん今日は遅かったね?」
「あのチョコの試作品を片っ端から味見させられて体調が優れないんです…その上、俺の分までしっかり作ってるから」
「あはははは、コトメちゃんらしいね」
ワシオくんはコトメちゃんと同棲して居ます。
つまりそういう関係です。
くそ!リア充め!!!

 

OP「絵画教室」

ASIAN KUNG-FU GENERATION

 

午前中の業務が終わり昼休憩です。
「いらっしゃい!おー!兄ちゃんじゃねぇか!」
御飯処『トキマサ』。
毎度のごとく大将の元気な声が響きます。
「こんにちは。いつもので」
「あいよ!」
この店には僕のお気に入りの場所があります。
それは入って3番目のカウンター席。
決して広いとは言えない店内で、この席に座ると、食事中の殆どの人の会話が聞こえてくるのです。
いい話もよくない話も。
これは僕にとってとても重要な事なのです。
「日替わりC定食おまち」
女将さんが持ってきてくれました。
女将さんはホールを担当して居ます。
「ありがとうございます。今日も賑わってますね」
「誰かさんが来てからこの町はうんと平和になったからね」
いたずらに笑う女将さん。
少し照れます…
「あれ?今日はデザートあるんですか?」
いつものお盆にいつもとは違う小包が一つ。
こじんまりと主張していました。
話を逸らすこともできて一石二鳥!
「今日はバレンタインだろ?ヨヅキちゃんが来ると思って用意しといたんだよ」
なんと…女将さん…
女神様…
「ありがとうございます!」
「それじゃ、ごゆっくり」
女将さんは軽く会釈をして奥へ戻ります。
ああ、なんか今とても幸せな気持ちになったなぁ。
なんて思ってると、ものすごく至近距離からものすごい視線を感じます。
「やらんぞ」
「当たり前でしょう…」
大将の嫉妬でした。
「そりゃそうか!俺なんて昨日その100倍は母ちゃんにもらったからな!」
自慢げに話す大将。
これは…ワシオくんパターンだ…
この店での食事はいつも平和です。
大将のつくる料理はどれも美味しいし、世間話なんかで盛り上がることもできて、女将さんが美人。
あっという間に時間が過ぎ、あっという間にご飯がなくなってしまいます。
「ごちそうさまでしたー」
「おう!またよろしくな!」
お会計を済まして店を出ます。
この引き戸の音がまた心地いい。
などと思って居るとアンコロが包みを咥えて飛んで来ました。
「おや、今日は手紙じゃないんだね」
包みにはメモ用紙が挟んでありました。
『義理!』
「マヒルだな…こうも義理を推されると嬉しさ半減だよね」
アンコロは「?」という様子。
「ありがとね」
とポケ豆を渡すと「わかってんじゃねぇか」とでもいうようにポケ豆を頬張り、飛んでいきました。
そんなこんなして居るとそろそろ昼休憩も終わりの時間です。
ジムに戻ると来客がありました。
「ヨヅキちゃん!もー、待ってたんだよ?」
イナリのばっちゃんです。
「こんにちは。どうされたんですか?」
「どうしたもこうしたもないよ!今日はバレンタインだろ!?」
いつになくテンションが高い…
これは嫌な予感がするぞ…
「あんたのために縁談の話を持って来たのよ!」
予想通り…
てか、バレンタイン関係ない…
「いや、その件に関しては…」
「今日という今日は逃さないよ!ちゃんと写真も持って来たんだ!」
ああ…逃げられない…
ここはとにかく話を逸らさねば…
「ワシオくー」
声をかけようとすると、彼は露骨に目をそらしやがりました。
こうなれば…
「コトメちゃー」
「あら、美人な方ですね」
お前もそっちの味方カァァァ!!!
「いいでしょ!?ヨヅキちゃんにぴったりだと思って!」
ぴったりだと思ってじゃないよ!
僕はちゃんと恋愛したいんだよ!!
という心の声は虚しく消えて、この後3時間売り込まれました。
とほほ…
なんとかイナリのばっちゃんを躱すと、コトメちゃんが声をかけて来ました。
「ほんと、そろそろ考えてくださいね。いい歳なんだから」
「そういうのは本人に言っちゃダメなんだよ?デリケートな話題なんだから」
「ほら、第一候補がお見えですよ?」
そう言って指を指すコトメちゃん。
その先には見るに麗しい女性が立っていました。
「あれ?なんで?」
マヒルちゃんでした。
彼女はズカズカと僕に近づいて、目の前に謎の大袋を叩きつけました。
「こ、これは…?」
「お兄が貰ってたチョコ。消化しきれないから食べて」
袋を開けると大量のチョコ、チョコ!チョコ!
「はぁ!?」
「お兄は今ジム戦だから私が代わりに持ってきた」
このむすっとした感じから察するに今戦ってる挑戦者も女の子なんだな…
「だからって…僕でもこの量を消費できるわけないだろ…」
「毎年コトメちゃんからの義理チョコしか貰えないんだから感謝しなさい」
「は!?違うし!他にももらえるし!」
「行きつけの店の女将さん?」
ぐ…
「イナリのおばあさま?町の人からの『義理』でしょ?」
ぐぬぬ
「とにかく、これ置いてくから食べてね」
そう言って去ろうとするマヒルちゃん。
「またんかーい!!!!!」
待ってくれませんでした。
と、先ほど僕を裏切ったワシオくんがニヤニヤしながら近づいてきました。
「お、今年もいっぱいもらえましたね!さっすがジムリーダー!」
「お前…よーそんなこと言えたな…」
「え?ジョウト弁?」
「さっき裏切ったやろ?」
「や!そんなつもりは…」
僕の中で積もり積もった何かがはちきれる音がしました。
「やべっ…」
ワシオくんは全力疾走。
「またんかコラ!!!!」
それを追うため僕も全力疾走。
「はぁ、毎年このくだりやって何が楽しいのやら…」
とため息をつくコトメちゃん。
それに同調するツキミ達。
僕だって楽しいわけじゃないんだよぉ!!!!
バレンタイン楽しみたい…

 

ED「メランコリニスタ」

YUKI

ジムリーダーの日常 第4話「日向の兄妹」

雲ひとつない晴天。

春の暖かさ。
近所の子供達が遊ぶ声。
「ふぁあ…」
ツキミもあくびをしながらマットの上へ。
のどかな町の小さな休息。
重力に任せ、閉じ行く瞼。
あぁ、この時がいつまでも続けばこんなにも幸せな日はないのに…
「ヨヅキ!!」
ふぁ?
うつらうつら目を開くと、そこにはこの世の者とは思えぬ美少女が…
「この…くそジムリーダー!!!」

 

OP「絵画教室」
ASIAN KUNG-FU GENERATION

 

寝ぼけ頭に刺さるこの罵声。
そう。以前名前だけ出てました。
ホコドメジムジムリーダーのマヒルちゃんです。
彼女は同期のジムリーダーです。
同期といっても年齢は僕の方が3つ上なのですが…
「あら、『闘拳の姫君』様じゃございませんか」
『闘拳の姫君』とは、マヒルちゃんの持つ2つ名で本人は痛く不服なのだそうです。
案の定ムスッとしてます。
「あんた!今日はお兄のジムでお兄と模擬戦するって言ってたんじゃないの!?」
お兄と呼ばれてるのはサイヒシティのジムリーダー・アサヒくん。
ちなみにこの二人は正真正銘の兄妹なのです。そしてそして、アサヒくんもぼくと同期のジムリーダーです。
「ああ、それなら1週間前にお兄様より中止とお聞きしましたが?」
「え、聞いてない…」
突然寂しそうな表情のマヒルちゃん。
ええ。ええ。そうです。
彼女はとてつもないブラコンなのです。
絶世の美女とも呼ばれる『闘拳の姫君』も眉目秀麗な兄の前ではただの女の子なのです。
「なんか言った?」
おっと…地獄耳…
彼女は「ブラコン」と呼ばれるのを嫌っています。
「何もないですよ。それにしても、なぜお兄様に聞かなかったの?」
「だって…お兄ジムにいないんだもん」
「それではるばるウスキネまで?」
ホコドメシティはサイヒシティのすぐそばにあり、ウスキネとは真逆に位置します。
「だって、あんたならお兄と仲良いし…」
この子に恋人がいないのはきっと兄のせいなのでしょう。
「んーじゃあ、とりあえずお茶でも飲む?」
「お兄は?」
「それはウスキネ探偵のこのヨヅキにお任せあれ!」

-所変わって-
インヨウ地方サイヒシティから少し離れた海岸。
名は『明るみの海岸』
その名の通り日当たりが良く、静かなこの場所はエスパータイプのエキスパートであるアサヒくんの精神統一の場でもあります。
「どうかしたか?」
アサヒくんの相棒・ヒマワリ(エーフィ♀)のセンサーに何かが引っかかったようです。
ヒマワリの尻尾がピクピク揺れてます。
「コソコソしなくていい。敵意がないのもわかっている」
言葉を理解しているのかしていないのかは定かではありませんが、彼の目の前にラティアスが姿を表しました。
「なんだ、君だったか。どうしたんだい?」
ラティアスはアサヒに一通の手紙を渡しました。
「ん?ヨヅキからじゃないか」
手紙にはこう書かれています。

親愛なる同期ジムリーダーのアサヒくん
どうぞ、貴方の妹を連れて帰ってください。
何卒よろしくお願いします。

「ヒマワリ、修行は一時中断だ」
ヒマワリは全てを察したように立ち上がり、アサヒに着いて行きます。
そして、彼がスーパーボールを取り出したげた瞬間、瞬く間に2人の姿は消えてしまいました。

-戻ってウスキネジム-
ジムにどえらい音量で罵声が響きます。
「何考えてんのよ!!この変態!!」
振りかぶった平手は、ぼくの頬に向かって美し過ぎるほどの軌道を描いた…
えっと、彼女が何にキレてるかと言いますと
アサヒへの手紙を書き終わって、お茶を入れてきた時間までさかのぼります。

×××

「なんであんたとお茶なんて飲まないといけないのよ!?」
2人分のお茶を入れた後に言うなよ…
「他にすることないから。それに、下手に話してると殴られるから」
「くっ…ナックル!インファイト!」
ナックルとは彼女の相棒であるルカリオのことです。
ナックルは指示を受けるなり、戦闘態勢をとり、一目散に僕目掛けて走ってきます。
その瞬間、僕の後ろから二つの足音。
そして目にも留まらぬ速さで2手に分かれ、
ねこだまし
怯んだナックルは運足を乱しバランスを崩す…
まるでそうなることを予測していたようにもう一つの影が上空から拳を振り上げます。
「そこまで!」
ぼくの号令で動きが止まる。
そこには、ナックルに馬乗りで拳を振り上げているキンチャク(ズルズキン)と、次の攻撃の準備を済ませたダイフク(マニューラ)の姿がありました。
「いいコンビネーションだったよ。2人とも」
キンチャクとダイフクは「えへへー」と言わんばかりの照れ方。
「あんたたち!ナックルに何すんのよ!?」
マヒルがナックルに駆け寄ります。
起き上がるナックルに臨戦態勢を崩さないキンチャクとダイフク
「先に仕掛けてきたのはそっちだろ?」
「だからって1対2なんて卑怯じゃない!」
「はぁ!?いきなりインファイトの指示しといて何言ってんだよ!」
「それはあんたが私をナンパするから!」
「なっ…ナンパなんてしてないだろ!」
「お茶にはそうなんてナンパ以外のなにものでもないじゃない!!」
「誘ったんじゃなくて提案したんだよ!」
ヒートアップする僕とマヒルに冷たい視線を送り始めるポケモンたち。
「そもそも、僕は君みたいな女の子は好みじゃないんだよ!」
「なんですって!?」
「いいか!?確かに君は可愛いさ!でもな、この世の正義はちっぱいにこそあるんだよ!!」
「はぁ!?」
「ちっぱくもない美少女に興味なんてないって言ってるんだ!」
シーンとするジム内。
先程まで2人に対して向けられていたはずの視線はいつのまにか僕に集中していました。
あれ…?
「何考えてんのよ!この変態!!」
バシッ!
平手打ちの音がジムをこだまする。
ちょうどその時、ジムの扉が開きました。
「マヒル!」
「お兄!」
お兄様ご到着。
妹がライバルに平手打ちしている現場を目の当たりにする兄。
そして軽やかにぼくをスルー。
「マヒル、大丈夫か?すごい音したぞ?」
ん?
「うん、大丈夫。お兄が来てくれたから」
んん?
「お前がピンチなんじゃないかと思って、テレポートして来た。どこか痛むか?」
手紙の主を無視して妹を心配する兄。
殴られたのこっちなんですけど?
「ちょっとだけ…でも大丈夫」
何故かはにかむ妹。
そりゃそうでしょうね!あれだけ本気で平手打ちすりゃ手にもダメージ行きますよね!?
「あのー、お二人さん?」
ここでようやくぼくに気づいたお兄さん。
「ああ、ヨヅキか。さっきの手紙なんなんだ?」
くっそぅ…なんかもう勝てない気しかしない…
「あ、うん。なんでもいいからその娘連れて帰ってくれない?」
「ヨヅキ。いくらなんでもそれは酷いだろ?マヒルは女の子なんだ」
当の本人は兄の影からあっかんべー。
ヒマワリとナックルは百合モード展開中。
ああ、ほんと。なんでもいいから帰ってくれ…
「はいはい。ぼくが悪うござんした。だから、早く連れて帰ってください。お願いします」
「マヒル。立てるかい?」
立ってるけどね?
「うん。ありがとう…じゃあね、変態ジムリーダー」
そう言い捨てて2人はジムを後にしました。
あああぁぁぁぁぁ!もう!!なんだったんだ!!
本当に何故あそこまでぼくが責められないといけないのか!
いまだに謎です。
まあ、兎にも角にもこれで静かな休息の時間が…
と思った瞬間から「ガチャン!」と勢いよく扉が開く音がしました。
そしてそこには先程の美少女が。
「ヨヅキ助けて!!」
は?
と思いながらジムの外に出てみると…
今までこのジムで体験したことのないほどの黄色い声援。
もちろんその声援達は、ぼくを訪ねて来たわけではありません。
『光耀の王子』の2つ名を持つアサヒくんに向けられたものです。
どこから湧いて来たのか、アサヒファンの女性たち。
その真ん中でヘタリ込むアサヒ。
そう。彼は極度の女性恐怖症なのです。
「あ、あ…お、女の…人…ヨヅキ…助けてくれ…」
もう勝手にしてくれぇぇぇぇえええええ!!!!!

 

ED「メランコリニスタ」
YUKI

ジムリーダーの日常〜キャラ紹介〜

TN:アサヒ

男性/25歳/6月16日生まれ/シンオウ地方ナギサシティ出身/インヨウ地方サイヒジム・ジムリーダー/エキスパートタイプ:エスパー/二つ名:光耀の王子

眉目秀麗、知略縦横、一騎当千
『完璧』を絵に描いたようなジムリーダー。
一つ一つの仕草に黄色い声援が飛び周りの男性陣からは妬まれるが、本人は女性恐怖症を患っている。
かくとうタイプのジムリーダー、マヒルとは血の繋がった兄妹。
唯一アサヒが正気を保っていられる女性が妹である。
ヨヅキとは同期のライバルで、親友でもある。
また、副業はしておらずインヨウ地方のジムリーダー長を務める。


手持ちポケモン
ヒマワリ-エーフィ

ジムリーダーの日常〜キャラ紹介〜

TN:ヨヅキ

男性/25歳/1月15日生まれ/ジョウト地方コガネシティ出身/インヨウ地方ウスキネジム・ジムリーダー/エキスパートタイプ:あく/二つ名:日陰の英雄

温厚で明るい性格で、“あくタイプ”のエキスパートとは思えないほど無邪気な表情をする。
しかし、普段は絶対に見せない冷たく燃える心を持つ。
ジムリーダーとしては、町の人々からの信頼が厚く実力もない申し分ない。
師と仰ぐジョウト地方の四天王・カリンとは姉弟のような関係で今もなお続いている。
ジムリーダーのほかに、暗峠にある暗がり神社の神主も務める。

手持ちポケモン
ツキミ-ブラッキー
ヨモギ-バンギラス
キンチャク-ズルズキン
ダイフク-マニューラ
マルコ-バルジーナ
オハギ-ヤミラミ
ヘギオ-キリキザン
ゼンザイ-スカタンク
クズコ-カラマネロ
シンゲン-サメハダー

ジムリーダーの日常 第3話「悪魔と呼ばれた生」

「よくやるなぁ…ね?チロル」
「ウィャー」とチロルも返します。
チロルというのはコトメちゃんのレパルダスのことです。
ジムリーダーやジムトレーナーといえど、日々の修行は欠かせません。
「はい!いっち!にー!いっち!にー!」
「いっち!にー!いっち!にー!」
ジムでは今、ワシオくん考案のハッスル修行を行なっています。
もちろん、ポケモン達も一生懸命ハッスルします。
ちなみにワシオくんのマトマ(ワルビアル)はとてつもなくキレキレです。
「ほら!ヨヅキさん!もっとマトマのように!!いっち!にー!いっち!にー!」
「いっち、にー!いっち、にー!」
「ヨヅキさん。私神社行ってます」
「え、あ、ありがとう。いつも悪いね」
コトメちゃんを見送るぼく。
「ヨヅキさん!何休んでるんですか!ほら!いっち!にー!いっち!にー!」
「は、はい!いっち、にー、いっ…ち…にー」
もうみんなヘトヘトです。
見た目以上に体力使うのがこの修行…
え?絵がないからわからないって?それはみなさんの想像力でカバーしてください。
ちなみに、コトメちゃんはハッスル修行をしたことがありません。
前に、何故やらないか聞いてみたのですが「あんなクソダサい振り付けのエクササイズをすると親が泣く」のだそうです…
「まだまだいきますよ!はい!いっち!にー!いっち!にー!」

OP「絵画教室」
ASIAN KUNG-FU GENERATION

-暗がり神社-
ジムリーダーの中には、その合間を縫って副業をしている人たちがいます。
実は、ぼくもその一人。
ぼくはウスキネジムの裏にある神社で神主さんをやっています。
「あ、ヨヅキさん。あの変態エクササイズはもういいんですか?」
「変態って…今日のところは一旦終了だって」
「そうですか。じゃあ、私はジムに戻ります」
「ありがとね。こっちまで手伝ってもらっちゃって」
「いえいえ。私が好きで手伝ってるだけですから」
「そう言ってもらえると本当に助かるよ」
コトメちゃんは神社の仕事も手伝ってくれています。
最近はコトメちゃんの巫女姿目当てでくるお客さんもちらほら…
しかし、その真意は『ハッスル修行』をやらないための口実だということをぼくは知っています。
この神社は普通の神社と違って悪魔を祀っています。
だからお客さんもほとんど来ないし、神を祀った神社さんとは交流がありません。
つまり、仕事という仕事がないのです。
「さて、お茶でもしようか。ね?ツキミ」
ツキミは「待ってました!」と言わんばかりのはしゃぎっぷり。
ジムリーダーといえど、休息は必要です。
副業を行なっているときは基本『非番』という扱いになり、ジム戦以外の公務はジムトレーナーに任せることになっています。
逆を言うと、『ジム戦』を申し込まれると嫌が応にも公務を施行しなくてはなりません。
急を要する場合やその他公務中の場合はジムリーダー代理を立てるか、挑戦者さんとの交渉になります。
さて、お茶をしているだけのシーンでは絵にならないので、暗がり神社についてももう少しお話ししておきましょう。
インヨウ地方には2つの大きな社があります。
サイヒシティにある『明るみ大社』とウスキネタウンにある『暗がり神社』です。
明るみ大社は別名『海神の砦』とも呼ばれ、かつて『ルギア』が生息していたとされる場所です。
インヨウ地方では二つの伝説があり、その片方が『ルギア』にまつわる伝説だと伝えられています。
そして、もう一つが『陰の悪魔』とも呼ばれる『イベルタル』の伝説。
その伝説では、世界を破壊し尽くしたイベルタルが眠りについた場所としてこの『暗がり神社』が出てきます。
元々は何を祀っていたのか、誰が建て、いつ出来たのかすら不明のこの神社には、本堂の奥に開かずの扉があります。
人はそこにイベルタルが眠っていると言います。
それがただの噂なのか真実なのか、それは誰も知りません。
「ヨヅキさん!」
そうこうしているとコトメちゃんが呼びにきました。
「やっぱりここにいたんですね」
「まあね」
「見つけにくいからもっとわかりやすいところにいて欲しいんですけど」
「でも、見つけれてるでしょ?」
「5年もあなたのそばにいればこそですよ。なんでここなんですか?」
「わからない。でも、好きなんだよ」
「私には理解できませんね。なんか生ぬるい気がするし、禍々しい気もするし。とにかく、ジムに戻ってください挑戦者の方がいらしてます」
「ああ。ありがと」
ここは暗がり神社。
悪魔を祀る神社。
悪魔とはなんなのか?
あくとは何か?
僕の最大の疑問で、最大の壁です。

-翌朝-

「ヨヅキさん!!コトメ!!二人も動く!!ほら!いっち!にー!いっち!にー!」
ワシオくんは今日もハッスル修行に明け暮れます。
「2日連続はきつい…」
「勝ちが続いてるからといって胡座かいてちゃだめですよ!」
「わたし、神社行ってきますね」
そういうとコトメちゃんは早足でジムを出て行きます
「あ!ずるい!!ぼくも…」
「ヨヅキさんは逃がしませんよー!いっち!にー!いっち!にー!」

ED「メランコリニスタ」
YUKI

ジムリーダーの日常 第2話「開業!ウスキネ探偵!」

 

「うみゃー…もうやだぁ…」
「ヨヅキさんも文句言ってないでやってくださいよ」
ワシオくんが新しい書類を持ってきました。
ジムのお仕事というのは、何もジム戦ばかりじゃありません。
町の問題を把握し、解決に努める。
そのためには沢山の書類に目を通し、ハンコをついたりつかなかったり。
所謂、デスクワークです。
「ツキミはいいなぁ…」
僕の足元で呑気な顔して日向ぼっこのツキミ。
『ツキミ』というのは僕の相棒であるブラッキーのニックネームです。
僕にはツキミのほかに9匹の手持ちポケモンがいます。
バンギラスの『ヨモギ
カラマネロの『クズコ』
バルジーナの『マルコ』
スカタンクの『ゼンザイ』
キリキザンの『ヘギオ』
ヤミラミ の『オハギ』
サメハダーの『シンゲン』
マニューラの『ダイフク』
ズルズキンの『キンチャク』
その他にも力を貸してくれるポケモンが沢山います。
と、ちょうどそのうちの一匹が飛んできました。
伝書ポッポならぬ伝書ヤミカラスの『アンコロ』くんです。
アンコロはこの町のヤミカラスを束ねるボスで、そんな彼らに郵便係を頼んでいるのですが…
「アンコロ、ご苦労様。お手紙かい?」
彼はいつも首元に手紙をしまいます。
これで落としたりしないところがすごい。
アンコロから手紙を受け取り、中を見ると…
「ワシオくん…町のピンチだ!ツキミ、行くよ!」
ツキミは突然呼ばれて「何事!?」という顔をしています。
しかし、そんなの御構い無し。
「あ、ちょっと!ヨヅキさん!逃げるなぁぁぁああ!」
町のピンチを救うことこそジムリーダーの仕事です!

 

OP「絵画教室」
ASIAN KUNG-FU GENERATION

 

さて、手紙にはこう書いてありました。
[緊急]
フレンドリーショップにて突如商品が消えるという怪奇事件が発生。
至急来られたし。
と、言うわけでフレンドリーショップ前。
こう言う類の問題はとにかく聞き込みです。
「こんにちはー」
恐る恐る店内へ。
すると…
「おぉぉ、お待ちしておりましたぁぁああ」
店の奥から店長さんが物凄い勢いで出てきます。
「こちらで商品が突然消える怪奇現象が起こったという知らせを…」
「そおぉぉぉおおなんです!」
おお、濃いな…この人…
「えっと、とりあえず状況から説明していただいて構いませんか?」
「そぉぉおおお!状ぉぉお況ぉぉおお!」
あー、
店長さんの言うことには、新規で入荷した高級ポケモンフーズが突如在庫から無くなっていたと言うことでした。
しかし、問題なのは
在庫を管理している倉庫には鍵がかかっていて人が入れる隙間もポケモンが入る隙間もないということ。
「なるほど、ちなみに警察には報告しましたか?」
「交番には行ったが『監視カメラを置いて様子を見てみましょう』としか帰ってこなかった」
あ、店長の喋り方は面倒だったので翻訳済みにしてます。
「ほうほう…では次に現場を見せてもらっても構いませんか?」
店長さんは終始不安定な感じで僕らを現場へと案内してくださいました。
いや、良い方なんですよ?めんどくさいだけで。
本当に店を思う良い方なんですよ?とてもめんどくさいだけで。
「ここですか…」
現場の倉庫には疑わしき点は何一つありません。
というより整備され尽くした倉庫で、倉庫独特の匂いもなく初めて入る僕ですらどこに何があるのか一発でわかってしまうほどでした。
「消えた痕跡すらない、か…ツキミ、どう思う?」
ツキミも捜査に協力してくれています。
倉庫内の隅々をポケモンならではの感覚を駆使して調べていきます。
調べ始めて数分。
ツキミは僅かな痕跡を察知しました。
それは壁に空いた極々小さな穴。その周辺にある流動体が通ったかのような少しの湿り気。
そして、天井を見るツキミ。
「そうか!」
「な、ななな何かわかったんですかあああああ?」
あ、やっぱりめんどくさいなこの人。
「ええ、犯人はわかりました。あとはあなたの判断に委ねます」
僕は事の顛末を店長に伝え、フレンドリーショップを後にしました。
続く…

「で?どうなったんですか?」
コトメちゃんがお茶を運んできてくれました。
「ああ、結局ねー」
後日、フレンドリーショップでは改装工事が行われました。
“ちいさくなる”を使ったベトベターが中に入って商品を食べてしまわないように倉庫の穴という穴を塞いぎ、その代わりベトベターのために廃棄場が作られ今は仲良くやっているそうです。
「とまあ、平和に解決されたよ」
いやあ、良いことをすると気持ちがいいものですね。
「ヨヅキさん…」
ワシオくんが物凄い形相でこちらに近づいてきます。
「フレンドリーショップの件で近隣住民から悪臭の苦情報告が殺到しているんですけど…」
なんと、店長の采配がベトベターの群れを呼んでしまい、その中の数匹が悪臭を漂わせているのだそうです。
「あー、えっと…でも、店長に懐けば悪臭は…」
「フレンドリーショップの悪臭を止めてきてください!!」
「は、はいー!」
ツキミが「やれやれ」と言う顔をしています。
小さな問題、大きな問題、
何かお困りの際はジムリーダーに御任せを!

 

ED「メランコリニスタ」
YUKI

ジムリーダーの日常 第1話「町のジムリーダー」

どうも。初めまして!ヨヅキです!

インヨウ地方でジムリーダーをやってます!
え、インヨウ地方が何処かって?
インヨウ地方っていうのは、ポケモン協会の本部から北へ南へ西東。世界地図の隅っこの方にある小さな地方でございます。
そんな小さな地方の中にある小さな町。
ウスキネタウン。
ここが僕の住む町。
さてはて、ジムリーダーとはなんぞや!?ということに関してですが。
ジムリーダーとは、各地方の「ポケモン協会」から選出あるいは任命され、各地方にあるジムでポケモントレーナーさん達の実力向上のお手伝いをする人たちのことです。
有名な人としては、カントー地方のグリーンさんやホウエン地方のセンリさん、シンオウ地方のデンジさんあたりでしょうか?
そして、多くのジムリーダーはそれぞれエキスパートタイプを持っています。
先にあげたセンリさんはノーマルタイプ。デンジさんはでんきタイプ。グリーンさんはマルチに使用しますが…
ちなみに僕のエキスパートタイプは「あくタイプ」。
これ、結構珍しいことなんですね。
大きな地方には一人もいないそうです。
まあ、説明はこれくらいでいいかな?
それでは、「ジムリーダーの日常」始まりです。

 

OP「絵画教室」
ASIAN KUNG-FU GENERATION

 

ジムリーダーの朝のお仕事、それはジムの前の掃き掃除。
町の顔とも言うべきジム前は、いつもきちっと掃除をします。
「ふぁぁあ」
しかし、早朝の空というのは清々しいほどに碧く、こんなにも碧いと箒を動かす手も止まってしまいます。
「あら、ヨヅキちゃん!今日も早いのね」
通りがかったおばあさんが声をかけてくれました。
町の人々とコミュニケーションをとる。これもジムリーダーの立派なお仕事です。
「あ、イナリのばっちゃん。おはようございます。朝からジョギングなんて精が出ますね」
「何言ってんだい!年齢に負けたくないババアの醜い足掻きだよ」
イナリのばっちゃんは、ウスキネタウンのお母さんの様な人で町の人からも慕われている近所のおばあさんです。
「ところで、最近はどうなんだい?」
「ん?まあ、いつも通り平和ですよ。この町は」
「そんな事じゃないよ!バカだね!いい歳したジムリーダーが浮いた話の一つや二つもないなんて本当に呆れるよ」
「は、はあ…」
イナリのばっちゃんは浮いた話が大好きです。
この町はインヨウの中でも小さい町、年頃のトレーナーは家を出て旅をしていたりするので僕のような青年期のトレーナーは格好の的なのです。
「そうだ!あたしの友達のお孫さんがちょうどあんたくらいの歳なのよ!」
「いや、僕はそういうの結構ですので…」
「んもぉ、情けない!ほら!手が止まってるわよ!次は写真持ってきてあげるからね!」
そう言って走り去る彼女は、まるで嵐の様です。
なんて思っていると
「おう!ジムの兄ちゃん!」
「あ、トキマサの大将」
トキマサの大将は僕もよく行くご飯屋さんの大将さんです。
ちょうど仕入れの帰りのようで、カイリキーが大きな段ボールを4つ持っています。
「最近どうだい?」
「あいも変わらず平和ですよ」
「そうかいうかい。そりゃいいこったな。時に兄ちゃん、今月はジムリーダー集会だろ?」
ジムリーダーには月に一度町の近況を報告し合うジムリーダー集会という集まりがあります。
「そうですね。それがどうかしましたか?」
「いや、その…マヒルちゃんの…」
「マヒルちゃんって、あのホコドメシティのジムリーダーですか?」
「そうだよ!あのマヒルちゃんだよ!」
マヒルというのは、ぼくの同期ジムリーダーでかくとうタイプのエキスパートです。
「できればでいいんだ!兄ちゃん!マヒルちゃんのサインを…」
服を掴みながら懇願されると断りにくいことこの上ないですよね。
「ま…まあ、一応聞いてみます」
「ほんとか!?ありがとよ!いやぁ、いやな!倅がな!どうしても欲しいってんだよ!」
この人はなんて純粋なんだろう。
そんな感心をしていると大将の後にいたカイリキーが突然逃走。
「お、おい!どこ行くんだ!」
しかし、その理由はすぐにわかりました。
「でも、あんた。そんなものどこに隠すってのよ?」
「そりゃおめぇ、俺様のお気にいりコーナー…に…」
大将も気づいたようで、恐る恐る振り返ります
「か…母ちゃん!?」
「あんたには私がいるでしょ!!」
いつからいたのか、女将さんブチ切れてます。
アニメで言うとぼくの目の前は灰色のもくもくが出来てて、たまに大将と奥さんの顔や手が見え隠れしている様な感じです。
こりゃぁカイリキーも逃げ出します。
「ほんとごめんねぇ、うちのがだらしないお願いしちゃって」
一通り悶着が治ると女将さんはいつもの優しい女将さんに戻りました。
トボトボ歩く大将がさっきより小さく見えるのは、きっと遠のいて行ってるからだと信じてます。
「いえいえ。そうやって慕ってくれる人が居るというのは同期として嬉しい限りですから」
「そうかい?ありがとね。ところでヨヅキちゃん。この前頼んでたアサヒ様のサイン、よろしくね」
アサヒというのはサイヒシティのジムリーダー。『恍惚の王子』とも呼ばれるエスパータイプのエキスパート。
こちらもまた僕の同期です。
「はい…一応言っときます」
「じゃ、よろしくね!」
なんとも素敵な笑顔で走っていく女将さん。
この町は今日も平和です。

さて、朝の掃除が終わるとジムも少しずつ動き始めます。
「ヨヅキさん!おはようございます!」
「ワシオくん。おはよう」
「おはようございます。ヨヅキさん」
「コトメちゃん。おはよう」
ワシオくんとコトメちゃんはこのジムのジムトレーナーさんです。
ジムトレーナーというのはジムの運営をお手伝いしてくれている一般トレーナーさん達のことです。
一般トレーナーといっても、各ジムリーダーの認めたトレーナーさんですから、みんな相当な実力者です。
「ヨヅキさん、早速挑戦者が来てますよ」
さっきも言ったように僕らジムリーダーの仕事はポケモントレーナーさんたちの実力向上のお手伝い。
一般トレーナーの人たちは「挑戦者」として「ジムリーダー」にバトルを申し込み、そのバトルの内容によってジムリーダーから「ジムバッジ」を貰い受けることができるのです。
「た、たのもー!!」
その声を聞いて僕の相棒のブラッキーが勢いよく走って来ました。
やる気満々の証です。
「よろしくね。さて、今バッジは幾つ持ってるのかな?」
「ふ、2つ!」
「なら、僕は3体で相手をするね」
「お、おす!」
緊張感が初々しい挑戦者さん。
この人たちの成長の糧になるお仕事。
それがジムリーダー。
「それじゃ、バトルスタートだ!!」

 

ED「メランコリニスタ」
YUKI